Canary Chronicle~カナリアクロニクル~

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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年:あらすじ

第二次世界大戦末期。誰もが戦争に倦んできた頃、フィンランド最北の地、ラップランドではソヴィエト軍フィンランド軍が戦闘をしていました。
フィンランド軍の兵士ヴェイッコは、囚人として、ナチ親衛隊のコートを着せられた状態で、凍土に打ち込んだ杭に繋がれ、囚人として放置されてしまいました。

同じ頃、ソ連軍大尉のイワンは、粛正のために連行されている途中に、友軍の誤爆によって大怪我を負います。

戦闘機が飛び去ったあと、現地のサーミ人、アンニが通りかかり、虫の息だったイワンを保護します。

一方ヴェイッコはやっとのことで杭を引き抜き、さまよっているときに偶然アンニの家に迷い込みます。

ヴェイッコ、イワン、アンニの3人は、誰一人として相手の言葉が分かりません。
戸惑いながらも、3人の奇妙な共同生活が始まるのでした。

『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

【レビュー※ネタバレなし】【ククーシュカ ラップランドの妖精】

最近、ちょっとエキゾチックな映画を観たい気持ちが高まっています。
で、ずっと気になっていた本作を、遂に観てみた訳ですが、いやーーーー不思議な映画だったーーー!!

若いフィンランド兵ヴェイッコと初老のソ連兵イワンは、どちらも仲間から罪人として殺されかかった兵士です。そんな2人がひょっこり生き残り、現地のサーミ人であるアンニに、一方は保護され、一方は迷い込むかたちで出会い、共同生活を送ることになるのですが、全く言葉が通じない。

しかもヴェイッコは仲間から「投降出来ないよう」ナチのコートを着せられているので、イワンは完全に勘違いして、ドイツ野郎! ファシストめクソ食らえ! と罵るのですが、ヴェイッコは「え、クソ……? クソなに?? クソクラ? あ、キミの名前、クソクラなの?」みたいな感じで、全く会話が噛み合いません。

『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

言葉の問題がある上に、長期に亘って男しか居ない戦場で暮らしてきたイワンとヴェイッコが、アンニを挟むことで、奇妙な三角関係になっていき、それもまた可笑しいやら哀愁漂うやらで、何とも言えない雰囲気になっていきます。

サーミ人のアンニがとっても魅力的。トナカイを飼い、満潮時に迷い込んだ魚を、干潮時に回収出来る罠を使い、掘っ立て小屋みたいな家で懸命に生きている。
夫は四年前に戦争に取られた、というシーンがあって、夫は生死不明でたぶん亡くなっているんだろうなという感じ。男日照りよみたいな独り言を言ったりしてるんですが、そんな彼女の下へ突如男が2人も迷い込んできちゃうので、ウキウキしちゃったりなんかして、可笑しくて可愛らしい。

『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

ネタバレ回避のために詳細は伏せますが、そんなアンニが行う呪術に、圧倒されました。
鬼気迫る雰囲気。
「わたしはあなたの腕を掴んで引き戻す。さぁ死の腕を振り払って帰っておいで。犬の遠吠えが聞こえたら」

そしてアンニは、長々と、犬の遠吠えを真似て吠え続けます。

わたくし、副題の「ラップランドの妖精」が、合わないなーと思いながら観てたんですが、ここではっとしました。

わたくしたち日本人は、「妖精」という言葉からは、空気の精シルフみたいな、可憐で儚い存在を思い描きがちです。
しかしシルフは、妖精のほんの一端でしかない。
例えば、トロール。人を襲い、人の女を攫い、自分たちの醜い赤ん坊を産ませようとする。
例えば、スプリガン。夜闇に紛れてこっそりと人間の住居に忍び込み、人間の赤ん坊を、自分たちの醜い赤ん坊とすり替えてゆく。

妖精の大半は、実はトロールスプリガンのような、血と土とけだものの臭いがする、荒々しい存在です。

サーミ人のアンニは、彼らのように、血と土とけだものの臭いのする、実にプリミティブな女でした。
妙な包容力で男たちを抱き締め、それでいて少女のようでもあり、まさに妖精という副題がぴったりであったことに、わたしはあとから気付いたのでした。

戦争という悲惨な現実と背中合わせの、実に不思議な、おとぎ話のような映画でした。

『ククーシュカ ラップランドの妖精』2002年

素朴な人々の土地で勝手に殺し合う外国の男たち。 捨てられないプライドやこれまでの生き方、もう闘いはイヤだと思うこと。

死の臭いのするキツい現実はそのままに、不自由に暮らし、自由に交わり、やがて残る者と還る者に分かれること。

観たものをまだまだ消化しきれていないわたくしですが、いやー何か、とってもよかった! ずっと覚えている作品となりそうです!!

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