Canary Chronicle~カナリアクロニクル~

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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】『人喰い人魚伝説』2001年

『人喰い人魚伝説』2001年

『人喰い人魚伝説』2001年

『人喰い人魚伝説』2001年:あらすじ

1905年アイルランド。アンガスはサーカスとは名ばかりのインチキ見世物小屋の興業をしているイカサマ師です。
一番の人気演目は、荒れ狂うゾンビ男! グガーッ! お客さんたちウワーッ!
するとそこへ、得も言われぬ歌声が……フラフラとステージを下りて、隣のテントへ入っていくゾンビ……
そこでは、とてつもなく美しい人魚が歌っていたのでした。うっとりと人魚の歌声に聞き入るゾンビ……

と、いうのはもちろんインチキです。
ゾンビに扮しているのは団員のベイリー、そして人魚はリリーです。

その街での最後の興業が終わった夜。一行はアメリカでの興行を控えて、渡米の準備をしています。
その日の儲けにウキウキしていたアンガスは、いつの間にかサーカスのテントに入り込んだ老人が、「あんたは人魚なんかじゃない!」とリリーに詰め寄っているのを見つけます。

止めると泣き出す老人。心配になったアンガスとリリーは、彼の自宅まで馬車で送ることにしました。

老人は、自宅の食堂で二人にワインを振る舞いながら、不思議な人魚の話を聞かせます。

そして、屋敷の奥に案内されると、本物の人魚が……!

『人喰い人魚伝説』2001年

アメリカで一山当てたいアンガスは、サーカスの団員数名を引き連れて老人宅に押し入り、人魚を盗み出してしまいました。

渡米船にこっそりと人魚を積み込むアンガスたち。
リリーは不安な気持ちでいっぱいでした。
何故なら、老人から「人魚は人を喰らう」と聞かされていたからです……。

【レビュー※ネタバレなし】美女と水妖の微百合に萌えるファンタジックホラー【人喰い人魚伝説】

1900年代初頭って、個人的に大好きな時代です。
第一次世界大戦の直前で、世の中に不安が充満し、一方でヤケクソのように文化は爛熟し切っている。
オーストリアではクリムトやシーレが全盛期の絵筆を振るっていた頃ですね。

本作の舞台は1905年のアイルランドと、アメリカへ向かう海上
登場人物たちのこの時代の装束、人魚の元の持ち主、ウーリッチ老人の屋敷も、ゴシック調でとても美しい。

そして、妖しく美しい、兇暴な人魚。
水中で揺らめく長い髪、刺すような視線、甘い声で囁く謎の言語。
それなのに、太い鎖の手枷で繋がれ、水槽は頑丈な鉄の枠で覆われている。

そんな人魚が、何故かヒロインのリリーに微かな好意を寄せ、リリーも恐れながらも人魚を労わってしまう。この、美女同士の微百合がたまらないですね。

『人喰い人魚伝説』2001年

水妖って非常に性的で、この物語にも印象的な出来事として、妊娠が登場します。

人魚の神通力?で妊娠させられてしまうって、生理的にうわああだし、非常に怖い事態ですけど、この物語のそれには不思議と祝福を感じる。

それはやっぱり人魚=海の象徴で、海は母性のイメージに繋がるからかもしれない。
人間の体液は海水と非常に成分が似通っているというロマンティックな話もありますね。

そしてこれだけ人魚に喰われる話が世界のあちこちに伝承されているというのは、もしかしたら人類は、人魚に喰われることで海に還りたい願望があるのかもしれない。 そんなことも思いました。

ホラーとしてはぜんぜん怖くないですし、「人魚の目的は、実は……」という部分は、はああ? そんな効率の悪い?? と呆れる後付け設定でしたが、非常に優れたビジュアルイメージで魅了してくれる、完全にわたし好みの素敵な映画でした。

わたくしやっぱ人魚大好きだわ!!!! 最高!!!!

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