Canary Chronicle~カナリアクロニクル~

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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

まちに出よ、詩を書こう!

【あらすじ】映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

何やら、神妙な顔つきで街をゆく我らがミノル。

バス停でバスを待ちながら、おもむろにペンとメモ帳を取り出し、バスに揺られながら、何やら書き付けています。

朝のまちは、いい香りがする。
朝のまち。朝のまちは……とてもいい香りがする。

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

朝のバスは人を詩人にする

うんうん、それでそれで??

亜美と合流してからも真剣そのもので、ミノルは書き続けています。

昼のまちは、、、これまた いい香りがする。

……お、おう。で??

昼のまちは、、、これまた いい香りがする。
夜のまちは、、、よ、る、の、ま、ち、は……。

亜美「いい詩浮かんだ?」
ミノル「んあああ! もうッ! もう少しだったのにッ」

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

ああっ!もう少しだったのにぃっ!

そう、ミノルは、『パターソン』に憧れ、詩を書き始めようとしていたのでした。
しかし、どうもうまくいかない。

亜美に進められて、詩のお教室に通うことにしたミノルは、渋谷区氷川区民会館の、詩の講座に申し込みました。

そこで早速ともだちができたミノルですが、どうにもこうにも引っかかる。

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

この男、どこかで……

この男、以前どこかで会ったような気がするのだが……!?

【レビュー※ネタバレあり】映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

やめてー!w 身に覚えがありすぎて、大爆笑のち大赤面の物語

あーっはっはっは! ヤバい!!

みんな知ってるか知らないけど、改めて自己申告しますと、わたくしトリッチ、尾崎放哉賞入賞経験のある、ガチの俳人です。えっへん!
つまり、俳句ガチ勢。
なので、短詩を作り始めたばかりの初心者がやらかす失敗を、ひと通りくぐり抜けてきた経験があります。

もーーーーヤバい(笑)。
本作冒頭、わかりみが深すぎて、大爆笑のち大赤面、やめて! もうトリッチのライフはゼロよ! ってのたうち回りました!

朝のまちは、いい香りがする。
昼のまちは、、、これまた いい香りがする。
よ、よる、夜のまち、は、、、あれ!?

あーーーーはっはっは! 分かる分かる!!
ミノルはまちに出て、「いい香りがするなぁ」って感動したんだよね!
で、感動に持ってかれちゃって、同じことしか言ってねぇ(笑)

これ、まじで分かります。 感動しすぎて、感動を表す言葉が、一つしか出てこなくなっちゃうのね。
天才は、この一つの言葉を一気にエモーショナルな詩へと昇華させられるのかもしれないけれど、はじめたばかりの一般人には土台無茶な相談です。
で、気付いたら、おんなじことしか言ってねぇ(笑)
これほんとあるあるなのです。

ヤベーな。解像度が高すぎる。
あまりにもあまりだったので、わたくし駒谷監督に、
「第55話のために、短詩系の人に取材してきたの?」
ってお問い合わせをしてしまいました。
監督はゲラゲラ笑って「取材なんてしてないよーw」っておっしゃってましたが、まじでポエトリーあるあるすぎたので、面白いんだけど、何か赤面しちゃいました!
はー恥ずかし!

パクるつもりないのに似ちゃうということ

で、二つ目の短詩あるあるです。
大好きすぎる先人に似ちゃう。
これねーほんとヤバいのに、あるあるなんです。
俳句だと、短い上に、季語ってもんがあるでしょ。
なので、気付くと似たようなことを言っちゃってるし、「好きだなー」て思ったやつにそっくりなのを、無意識に詠んじゃってたりする。
いわゆる「類句」問題てやつですね。

これ、自分が「やっちゃった!」って気付いたときは、あたまかきむしります。
恥ずかしいやら申し訳ないやら。
「ちがうんだ!! パクるつもりはなかったんだ!!」
って、ほんっとに大声で弁明したくなります。

短いものや、シンプルなもの程、そのつもりはなかったんだけど似てしまった、ということは起こりやすいと思っています。

やっちゃったときは、もうしょうがない。
でも、「やらかしてしまう」危険性については、敏感になるべきだなと思っています。
アウトとセーフの境目はどこだろうって考えることも、とても重要。

わたしがやっている「自由律俳句」は、過去に大スターが居て、最初は大スターの真似をしてはじめることが多いので、いつまで経っても大スターの模倣でしかないって人もものすごく多いし、うーん、でも「オリジナルよ!」と言いつつ、クソド下手とかよりも、放哉風味が強すぎてもうまい方がいいのか?とか、考え出すと止まらなくなりますね。

そして声を大にして言いたいのは、ここではない。

「何かを作ろうと思い」「実際に作ってみる」ことは、尊い
これです。いちばん大事なことは。

最初はうまくできるはずなんかない。
で、クソド下手なものが出来上がろうが、それを人からそしられようが、作りたい!という衝動のままに、作り続けるということ。楽器なら奏で続けるということ。
これはもう、何よりも尊い

三度の飯より恋が好き‼ な、ドッピンク脳のトリッチだけど、「作りたい」という気持ち、そして実際に「作ってみる」という挑戦は、恋よりも尊いと思っています。
いや、恋もクソ大事だけどさ(笑)
でも、でも、ド下手クソでも作り続けるということ。
これをどうしても失いたくないんだ。

恋を失っても、わたくしは「フラれたみっともないわたくし」になるだけだけど、書くことをやめたら、もうそれはわたくしではないような気がする。
「アーティスト気取りしやがって」と、ばかにしたければ、どうぞどうぞ!
お前のそしりなんて、こわくも何ともねぇ。
誰に何言われようと、好きなものは手放したらダメです。
もしも手放したりしたら、わたしは、あなたは、わたしやあなたでなくなってしまう。

だから浅尾クンが、彼女に言われて何となく始めたことであり、しかも無意識のパクリをやらかし続けたとしても、書きたいと思う気持ちは尊い

ミノルから「それは彼女が、お前を自分の理想に押し込めようとしてるだけじゃない?」って指摘され、「そうかもな」と思いつつも、「でも今は暴力よりも言葉の力を信じている」とまで思うようになった浅尾クンを、わたくしは支持したいと思います。

そして何より、物語の終わりに、ミノルが初めて作った詩に、じーんときてしまいました。

ミノルが初めて最後まで書けた詩は、亜美ちゃんが「う、うーん」と苦笑いしてしまうようなものだったけれど、わたしにはちゃんと伝わったよー!

ミノルは、出会いが最悪だった浅尾クンと、今回ほんのちょっと心が通じたように感じたことが、とてもうれしかったんだよね。
だからそのあざやかなよろこびを、そのまま詩に書きたいと思ったんだ!
うんうん。それそれ。それが葉山先生が言ってた「詩を書く心の準備がある」ってことなんだよねー。

あ、なんか、わたしも初心に帰れた。そんなふうに思いました。
人生は、この世は、ヴィヴィッドな驚きと歓びに溢れている。
それがバロウズが「フォークの上の剥き出しのランチ」って呼んだやつだね。
そしてそれが、オレたちがものを書く理由だ。
この歓びを、ちょっと忘れてたなー。思い出せてよかった。まじでそう思って、お鼻がツーンとしました。

てな訳で、本作、「トリッチの最も好きな映画かよ。エピソード集」に仲間入りしました。本作と、本作の前日譚たる第39話「ハプニング」と、第28話「ドグマ95」は、創作活動の歓びに満ちたエピソードで、本当に大好きです。

受け止めてくれる亜美ちゃん。ええよな。

で、今回。亜美ちゃんいいよね。
「詩を書きたい」なんて唐突に言い出しても、決してばかにすることなく、「いいの書けたー?」って聞いてくれるし、やっと書けた詩が洗練されてなくても、「い、いいじゃん! 特に、その、ヘッドフォンが!」って、いいところを無理やりにでも探し出して励ましてくれる。まじいいともだち。
ミノルも亜美になら、初期のド下手クソな詩でも、安心して聞いてもらうことができるよね。

「もう俺、インディーズ映画からは足を洗ったんで」と告白したことがあるミノルは、映画を愛しながらも、映画製作には、もしかしたら苦い挫折を味わったことがあるのかもしれないけれど、詩作に身を投じることで、「自分がプレイヤーに返り咲く」歓びに、目覚めてくれたらいいなと心から思います。
脚本を書く華琳(ファリン)知里佳ちゃん、そして(劇中の)駒谷監督ブリジットを、心から応援してくれる彼自身が、クリエイターとして生き生きと活躍し始めてくれたら、ファンとしてこれ以上にうれしいことは、ありません。

そして本作の亜美ちゃん、初期映画かよ。の亜美ちゃんの魅力を彷彿とさせてくれました。
勇気と正義感があり、困っていそうな人を助けるためには、危険を冒すことも辞さない強い女。まさに「映画ヲタ・ジャンヌダルク」の異名を持つ女です。

また、本作の亜美ちゃん、めっちゃ綺麗だよねー!

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

このシーンの亜美ちゃん、めっちゃ綺麗よね

最近ちょっと髪が長くなったのがよき。本作の冒頭、ミノルの朝の詩のくだりに登場する亜美ちゃんは、ほんとに綺麗ではっとしちゃいました!

「大人のテキトーマン」を、圧倒的うまさで表現する滝上さん

そして今回も、ゲスト俳優さんたちの、名バイプレイヤーっぷりが光ります。
先ずはミノルの、詩の先生である葉山先生こと、滝上裕二さん!

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

いい先生なのに、テキトーすぎる(笑)

もう圧倒的にうまい。スッゴい自然に、情熱的で、心優しく、しかしテキトーすぎる詩の先生を演じておられます。

「わーミノル、いい先生に会えてよかったねー」と思った瞬間!
「テキトーな詩を書くくらいなら、何も書かない方がいいッ‼」
ってアナタwwwwwwww
ミノルは、詩を習いに来てるんですよ? ちゃんと教えてあげてくださいwww

スゴい良い声で、スッゴいテキトーなことを言ってるので、可笑しくてたまりませんでした。
ものすごい神妙そうに、ポエティック・ジャスティスがどうしたこうした言うのもサイコーでした。いつか絶対氏神神父と激突してほしいです!!

まさかの浅尾クン再登場!意外な一面を見せてくれる

そして、まさかの再登場の浅尾クン!

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

あのときの金髪くんが真人間に……!

彼の初登場は、第39話「ハプニング」で、ブリジットからショートフィルムを購入するために代金を振り込んだのに、ミノルに横取りされて激怒する、やんちゃな男性でした。
しかしミノルが再会した彼は、大好きな彼女に出会って、変わっていた。
彼女の好きな映画『パターソン』に自身もはまり、バス会社に就職し、詩作を始めていた。

やんちゃな頃の面影を残しつつも、恋人の影響で創作活動を始め、「今は暴力よりも言葉の力を信じている」とまで言うようになった男を、めっちゃイケメンの石山将隆さんが熱演しています。

亜美ちゃんに叱られて、「はいはい、ありがとぉ!」と言い返すように言いかけたあと、ふと気が変わって、「ありがとう、亜美ちゃん」と、心からの感謝を込めて言い直すシーンがめっちゃよかった!! ミノルや亜美と、少しだけどちゃんと心が通じた瞬間の演技、お見事でした!
その後ミノルがうれしくなって、そのことを詩にしたくなった気持ちがばっちり伝わってきたのも、この見事な「ありがとう」があったおかげです。

ほんといいシーンだった。その後の彼も、是非見たい!
次はひと癖ありそうな、浅尾クンの彼女も出演してほしい!

ナゾ多き美女、再演にて彼女の物語を強く希望!

そして今回、短い出演ながらも、深い爪痕を残していったのは、「ポエティック・ジャスティス」メンバーこと坂千鶴を演じる滝野瀬あゆかさんです。

映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」

清楚な美女なるも危険人物!

画面に出てくるなり、「わ、美人!」と思わず叫ぶ美貌の持ち主!

それでいて、一瞬で「め、めんどくさそー!」と思わせる、くせものっぷりはどうだろう(笑)
「文学好き、しかもポエトリー原理主義者」ってゆー、クソめんどくさそうな雰囲気を、一瞬で伝えてくるの、ものすごいと思いました!

彼女が詩に情熱を抱くようになったきっかけとか、是非知りたいので、スピンオフよろしくお願い致します!

そして個人的には、ポエティック・ジャスティスには、是非せき◯ろさんを拉致して「矯正プログラムにかけ」てほしい(笑)
何故ならせき◯ろさんは、自由律俳句をクソダセぇものであるかのように世間を誤解させた大戦犯だからです。
ちょっと笑えるあるあるや、標語じゃねんだよみたいなやつを、自由律俳句でございみたいに出すみたいな風潮を作ったせき◯ろ氏、許すまじ。 拉致して爆音で放哉句を8週間くらいぶっ通しで聴かせる拷問にかけてほしい。

お前の墓の裏に回ってやろうかああああ‼



てな訳で、創作の歓びに満ちた本作、映画かよ。Like in Movies 第55話「パターソン」、是非観てきてください!

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