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【映画レビュー】『フランケンシュタイン対地底怪獣』1965年

フランケンシュタインと地底怪獣』1965年

『フランケンシュタインと地底怪獣』1965年

フランケンシュタイン対地底怪獣』1965年:あらすじ

第二次世界大戦末期。ベルリンのリーゼンドルフ博士は、不死の兵士を作るべく研究を続けていました。そこへナチスが踏み込んできて、不死の心臓を博士から取り上げ、秘かにタイへ養生で日本軍の潜水艦へ受け渡しました。心臓は広島の病院内にある研究室へ。しかしアメリカ軍による原爆投下が行われ、研究は中座してしまいました。

それから15年後。広島県では飼い犬が殺されたり、学校でうさぎのバラバラ死体が発見されるなど、奇怪な事件が相次いでいました。そんなとき、宮島の裏山で不審な浮浪児が目撃され、一連の動物虐待事件はその子が犯人なのではという憶測が飛び交います。

ある雨の夜。国際放射線医学研究所のボーエン博士は、助手の戸上季子(とがみすえこ)の自宅に招かれ、夕飯をご馳走になっていました。外は激しい雨。と、窓の外で交通事故の音がしました。タクシーが子供にぶつかったようです。しかし無傷の子供に驚いたのか、タクシーは逃げ去ってしまいました。雨の中に取り残された子供を哀れにおもった季子は、窓から食べ物を与えました。

数日後。宮島の浮浪児が保護され、あの雨の日の子供だったこともあり、国際放射線医学研究所で預かることに。子供は白人で、知能に遅れがあり意思の疎通が難しい様子でした。その上短期間で急成長、20mを超す巨人になってしまいます。その後巨人は研究所から逃亡。時を同じくして秋田で地底怪獣が現れ、別荘村の若者たちを食い尽くすなどの惨劇が発生しました。疑われる巨人。巨人も地底怪獣も、日本アルプスを目指している、とうい予測の下、ボーエン博士、季子、そして研究所の川地は日本アルプスを目指します――。

【レビュー※ネタバレありまくり】フランケンシュタインの怪物=悲しいもの。という正統派の流れを汲んでいる【フランケンシュタイン対地底怪獣】

※※※注※※※

フランケンシュタイン」という言葉に関してですが、「フランケンシュタイン=不死の怪物を作った博士の名前、そしてあのつぎはぎ怪物は名無しである」というのが、オリジナルのフランケンシュタイン物語のお約束ですが、この映画に関しては、怪物の名前=フランケンシュタインということでお話を進めますね。

そしてネタバレ満載、満艦飾です。
未見のかた、以下の文章にご注意ください。

あちこちで名作の呼び声高く、いいから一度観てくれ!と言われている『サンダ対ガイラ』。
でもサンガイを観る前に是非ともこちらを観てくれ、とのことだったので、今回『フランケンシュタイン対地底怪獣』を観てみた訳ですが、いやもういろいろとショックで、レビューをまとめるのに1週間もかかってしまいました。

和製フランケンシュタインてどうなのと思ったけれど、これは悲しいです。
そう、フランケンシュタインは悲しくなければいけない。

その点このフランケンシュタインは悲しすぎます。
原爆投下後も心臓のままで生き抜いてしまい、その後、着々と成長し続けてしまう。 急成長する体を支えるためには多量のタンパク質が必要で、そのために動物を襲わなくてはならない。
そのため、恐れられるし異端度が増していく。急成長する体に対して知能は低いため、他人とは最低限のやり取りしか成り立たない。


けれども優しかった人間のことは分かるので、研究所から逃げ出した直後に、季子のアパートまで別れを告げにくるんですね。
もうものすごくデカくなってるから、窓からじっと覗き込んで……

『フランケンシュタインと地底怪獣』1965年

「何処にも行っちゃいけない!」と季子から言われつつも、既に追われる身であるが故に、そそくさと闇に紛れて逃げていくフランケンシュタイン。可哀想すぎます。

で、ひと気のない日本アルプスに逃れてからも、悲劇は続きます。
動物を捕らえようとして、投げた大木が人家に当たってしまったり、イノシシ用に掘った落とし穴に戦車がハマってしまったり。その上、人間をバクバク食べるはた迷惑な地底怪獣まで現れて、そちらの被害も自分のせいと思われたり。。。

これどうやってフランケンシュタインと地底怪獣=バラゴンを激突させるつもりなのかなと思って見ていたら、ここが泣けるところだった訳です。
自分のことを殺すのもやむなしという気持ちで追ってきていた川地博士を助け。バラゴンと直面して、食われかかっていた季子を助け。その流れでバラゴンと対決することになるのですね。特にボーエンたちの前に現れて、川地をそっと目の前に下ろしてあげるところには泣きました。

フランケンはさぁ、ぜんっぜん悪くない訳ですよ。
不死身の兵士なんてばかげたものを作ろうとしていた愚かな人間によって生み出され、死ぬことも叶わず、けれど生き続けるには、人間と共存出来ない要素が多すぎて。
誰のせいでこんなことに???って、怒りと共に何度も問い直さずにはいられませんでした。

で、最後はあんなことに。。。ボーエン博士が言うように、「死ねない」ということは呪いと変わらないのですね。
逆に死というものは恐ろしいけど、やはり祝福の一種なのかもしれない。
そんなことまで思ってしまいました。

『フランケンシュタインと地底怪獣』1965年

あとね。意外と季子さんがフランケンシュタインに対して聖母でないところがモヤる。
季子さんは研究者ですので、あのようなスタンスなのかもしれないけれど、フランケンシュタインにそれなりに情は移っているけれども、あくまで「得体のしれない化物」であり、研究対象なんですね。
じゃあ坊やとか呼ぶなよと思ってしまった。
んんん、季子ぉ!! 季子のスタンスまじでモヤる!
季子が、でも、フランケンシュタインに対してまじ聖母だったら、別のお話=メロドラマになってしまうのだろうか。

モヤるけど、でも、フランケンシュタイン=異端の者、そして愛情を求めても得られぬ者、ってことを描き切ったところは、ある意味フランケンシュタインの正統派と言えるかもしれない。

いやもうこれ、めっちゃ名作ですよ。怪作で名作。

『サンダ対ガイラ』にも、襟を正して挑もうと思います!!

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