Canary Chronicle~カナリアクロニクル~

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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

 

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年:あらすじ

1970年代、ハンブルグ。フリッツ・ホンカは酒飲みで貧乏でフニャフニャの冴えないオッサンです。あまりにもブサイクなので、バーでおにゃのこにお酒を奢ろうにも「あんなブサイクにはおしっこをかけるのすらイヤ」とか言われてしまいます。

留年が決まったJK、ペトラは、ある日カフェでそんなホンカにタバコの火を借りました。その日以来、ホンカの心にペトラが住み着きました。

あーん、ボクちん、あーゆーおにゃのことイイコトしたいよーー!

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

ホンカの心の君、ペトラたん

 

だけどホンカが、ポルノの切り抜きを壁に張りまくったドキタねぇ自室に連れて帰れるのは、行き場のないクソババアとか、とうの立ちまくったおげれつそのものの三人組娼婦とか、そんなんばかり。

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

男に叩き出されて行き場を失くしたおばさん……

 

仕方ない、コレで我慢しよ……
でもめんどくっさ! もう何もかもめんどくっさ!

あたまの弱いホンカは、女たちの始末に困り……。

【レビュー】うははははは爆笑!wわびしさを笑い飛ばすジャーマンリアリズムの妙

うはははははは、オモロー!!wwwwww
さすがドイツ!! 描き方が容赦ないねー!! 好き!!

はい、大好きです。
トリッチメーターの好感度、振り切りました!!٩(๑´3`๑)۶

「わびしさ」って言葉を聞くと、我々は悲劇や、なんかこうシリアスな、真面目くさったムードを感じるじゃないですか。

しかし、本作は可笑しい。わびしさを徹底的に笑い飛ばしてしまっている。

しかも、意地悪に皮肉にそうするのではなく、もう徹底した写実主義、リアリズムの表現の果てに笑い飛ばしちゃってる。イイネ!! まるで俳句みたい!! そして時代に合ってんじゃないの? こういう見方・描き方ってとってもいいなと思ってしまいました。

フリッツ・ホンカは実在の殺人鬼です。
クソ貧乏で酒に溺れて、安アパートの中でも最も条件の悪い屋根裏に住み着いています。

ちなみに、汚部屋ウォッチングが大・大・大好きなわたくしは、本作でとてつもない汚部屋が観られると聞いて、鼻息も荒くレンタル店に登場するなり借りてきた訳ですが……

トリッチの汚部屋ジャッジは……
ドロロロロロロロ……(ティンパニ

ジャッジャーーーーーーン!!

「下の中」!!٩(๑´3`๑)۶

最低ランク「下の下」ってほどでもありませんでしたね。
お台所の倉庫?に、殺した女たちを無理やりぶっ込んで、いい感じに腐ってる以外は、取り立てて糾弾したくなるほどの汚部屋ではありませんでした。
劇中で、ホンカが連れ帰ったクソババアが「ちょっとお掃除してあげようかしら……」って思えるくらいだから、まぁ大したことありません。

ただ、非常に、非常に、わびしい。

汚部屋って、楽しい汚部屋とわびしい汚部屋があるんですよ。

ホンカの汚部屋は、めちゃめちゃわびしい汚部屋でした。
独身男の一人暮らしで、いろいろと行き届いておらず、ものが多すぎてゴチャゴチャしている。キッチンも汚れたまま。あの散らかり方は、あたまが弱い人特有の感じがよぉ出てるよな。要するにアホで落ち着きがないのでお部屋が片付かない。彼の心や脳味噌のように、とっ散らかっているのです。

しかし、女への欲望は燃え盛っている。燃え盛ってるっていうとなんか激しくてカッコいいですが、メラメラしてるっていうよりも、身もふたもない言い方をしてしまえば、習慣的にチンコがピクピクするので捨て切れず、って感じです。

そう、ホンカは女に対する欲望すら、わびしい。

あーーー若くていい女とえっちしてぇーー
あたまの中がそのことでいっぱいだから、ポルノ雑誌を買ってきてはお気に入りを切り抜いて、壁という壁に貼り付けている。切り抜きは順番に古びていくから、いつの間にか壁の半分以上が汚い紙切れで埋め尽くされている。

イイネ!! ちょうわびしー!!

こういう家主の、あたまの悪さや赤裸々な欲望が丸見えの汚部屋、大好きだな!! キタなさはもう少し頑張る余地がありそうですが、わたくしの覗き見趣味を満足させるには、十分すぎるステキな汚部屋です。

で、わびしいのに、ちょう可笑しい。

ムチムチぷりんちゃんのJKとかJDとヤリたい、せめて30代、という本人の願いも虚しく、ホンカは、男から追い出されて行くあてのないクソババアとか、飲んだくれ三人組年増娼婦とか、そんなんしかお持ち帰り出来ません。

で、こんな女がほしい訳じゃないのに、と腹立たしいけども、これしかムリだから、やることやって、でも女たちのことは邪険に扱う。

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

ババアなんてこうしてやるー!

 

クソババアはクソババアで、それが虚しくてヨヨヨと泣いたりもするけれど、こんなホンカでも利用出来ると思ってるうちは、侮辱されても出ていかないし、することはする。で、うまくスルリと逃げ出したり、運が悪ければホンカの「倉庫のおともだち」にされて、グズグズに腐っていく。

もうド底辺の、どーしよーもないオッサンとオバハンの、どーしよーもない生き様を、これでもかと見せ付けられて、さすがのトリッチも唖然呆然! のちの大爆笑!

いやーーーこれはスゴいリアリズムだわ。
人間、極限状態で生きていかなきゃならんとなったら、このように醜さをむき出しにしながら、相手を利用し、利用され、踏み付け合うのかも。その様子がまさに悲喜劇って感じ。
イイネ!! めちゃめちゃ面白いわ!!

ホンカ役のヨナス・ダスラーくんスゴすぎる。
特殊メイクでクソブサイクなホンカ顔になっているけど、ご本人は完璧なゲルマン系イケメンだし、歳も若い!!
でも劇中では、猫背でボソボソ話し、下卑た笑みを浮かべて女に近付いては足蹴にされる、情けない中年に成りきっていた!! よぉまぁこんな役を引き受けたなーーーーと驚くばかり。

ホンカの殺人は、もう本当にいきあたりばったり。

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』2019年

でええええ!こうしてやるー!

 

殺すことに快楽を覚え……みたいな深淵そうなアレではなく、単に、連れ帰ったはいいがババアの処置に困ったとか、ババアでも我慢してやっちゃおうと思ったのに、途中でババアがなんかムカつくこと言ったからぶっ殺した!みたいな、ほんとあたまの悪い殺し方を繰り返しています。

いいねーーー絶望!!
そう、人生最悪の絶望は、貧乏な上にあたまがわるいということなのです。

一切オブラートに包まず、この事実を淡々と我々に突き付けてくる本作!! まさにジャーマンリアリズムのお手本と言うべき、胸糞爆笑名作コメディでした。

最終的にホンカがペトラちゃんとどうなるのか、是非見届けてあげてくだたい!!

スゲー愛を感じるド底辺ライフ映画!!
最高に楽しい映画体験でした!!٩(๑´3`๑)۶

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