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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

亜美の『キングダム』DVDBOX受難リターンズ

【あらすじ】映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

真剣な表情で向かう先は……

思い詰めた様子で歩む、ミノルと亜美。
二人は、潤(うるみ)の下へ向かっているのでした。
そう、潤に貸した、亜美の『キングダム』DVDBOXを取り戻すために……。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

お金になりそうなネタには食い付く、我らのミノル

事の発端は、ミノルでした。
ミノルは、レビューを提供している映画ファンサイト、映画人生.com 編集長、楢川から、ラース・フォン・トリアーの『キングダム』続編が上映されるという情報を入手。
そこで亜美が、現在入手困難な前作『キングダム』のDVDBOXを持っていることを思い出し、高値で売れるうちに売らせようと目論んでいたのでした。

亜美は、思い出のたくさんこもったDVDBOXを、売る気なんてさらさらありませんでしたが、後輩の潤に貸しっぱなしだったことを思い出したので、ミノルと一緒に回収しようと思い立ったのでした。

亜美は、以前に『キングダム』DVDBOXを失いそうになった苦い経験がありました。
それは男に弱い美帆に貸していた際、美帆が道端で拾った記憶喪失のイケメン、リッチーが、実は極悪人で、『キングダム』を盗み出してしまったのです。
(※こちらの詳細は、第11話「マルホランドドライブ」をチェック!)
さいわいあのときは、違法上映会を開いていたリッチーが逮捕され、映画ヲタ犯罪潜入捜査官を出し抜くための逆捜査官、ブルーと取引することによって、取り戻すことができましたが(※こちらの詳細は、第17話「インファナル アフェア」をチェック!)、今回は、何だかイヤな予感がします……。

果たして潤を尋ねると、何と彼女は又貸ししてしまったことを白状します。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

「安岡に貸しちゃったぁ!」と悪びれない潤

あわてて安岡を訪ねるも、安岡も又貸ししていて……!?

気が遠くなる亜美でしたが、ここで諦める訳にはいきませんでした。
大事な宝物の『キングダム』。再び失われてなるものか!

そして亜美とミノルの、『キングダム』を探す旅路(?)がはじまるのでした――。

【レビュー※ネタバレなし】映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

人類最古の恐怖、「喪失の予感」

いやーーーーいいお話だった!
映画愛にあふれ、そして笑いどころのたくさんある、実に映画かよ。らしいエピソードと思います。

物語は、ミノルのゲスい儲け話で幕を開けます。

自分の持ち物でもないのに、ミノルは売る気まんまんです。絶対今が『キングダム』DVDBOXを高値で売り払うチャンスだ!と意気込みまくり。

しかし、持ち主の亜美は、売る気なんてまったくありません。
だって宝物ですもの。

このミノルと亜美の温度差が、視聴者を恐怖のどん底に叩き落します。
「これは、失いたくないと思っている人が、大切なものを失う物語なのではないか」と。

嗚呼、我々ヲタは、何度この「喪失の物語」に震撼、憤怒、また絶望してきたことか。
あまりにも有名なものとしては、「鉄道模型奥」などがありますね。
(※注※ 鉄道模型奥は本当にキツい話なので、閲覧は自己責任で)

「喪失の予感」。これこそが、有史以前から、人類が恐れてきたものと言って過言ではない。

大切なものを失うかもしれない、と思うとき、わたくしは、壁を叩き、床を叩き、地面に倒れ伏し、空を仰ぎ、神にすがり、ああどうかどうか失いませんように。これを失ったらわたくしは生きてゆけません。神よわたしはほかの何も欲しがらなかった(←ウソ)。唯一欲しがったこれを、わたくしから取り上げるとおっしゃるのですか。ならテメェは糞ゴミ以下の豚野郎だ!! 死ね!!!!!!

とばかりに、神を面罵し、心の均衡を失い、髪振り乱し、口からはよだれを垂らし、滂沱の涙を流し続ける肉塊と成り果てるのです。

亜美ちゃんの『キングダム』は、一度失いかけて戻ってきたという経緯もあるし、危険な匂いがプンプンします。

しかも今回、亜美ちゃんは、「絶対イヤ! 売らない!」と、激しい抵抗をして見せる割には、心の中では、既に諦めてしまっているようなムードをかもすのもつらい。

亜美ちゃんは、キングダムDVDBOXに執着する自分の気持ちを、喪失の予感を抱えて渋谷の街を駆け回りながらも、静かに見つめている。
そして「自分はキングダムから、大切なものを十分に受け取ったから、いま観たがっている人に譲った方がいいのではないか」などと、考えはじめてしまいます。

そして、気にしてるから、奇妙な夢も見ちゃう。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

「赤ンボハ泣ク、大人モ泣ク……。」

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

「DVDBOXモ、泣クコトガアル……」そうなの?😭

やめてーーーーつらい!!😭😭😭
キングダムはわたしのものじゃないけど、亜美ちゃんが失うのを見るのもヤダ!!
ああ頼むからそうならないで、オレから去っていかないで!!
ん、あれ? オレ?? キングダムオレのだっけ????と、またもや
あやしうこそものぐるほしけれ!!な心境になってしまう、わたくしトリッチ!!
いつものように、虚構と現実の境界線があやふやに!!

ひと癖どころか、何癖もある助演陣

こんなにも大切な、亜美ちゃんの宝物『キングダム』DVDBOXですが、無責任なスットコドッコイ野郎どもに、又貸しに次ぐ又貸しをされて、あわれ亜美ちゃんは、ミノルと一緒に渋谷の街を右往左往する羽目になります。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

スペクタクル感満載の「地図移動」だが……。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

渋谷三丁目から宇田川町への移動でした(笑)

これを、映画でよく見る「地図移動」で表現してるのが、めっちゃ可笑しい(笑)
「次に曹操が攻め入ったのは……」的なスペクタクル感がありますが、亜美とミノルは渋谷三丁目から宇田川町へ移動しただけ(笑)
本作では、こんな感じの「地図移動」が繰り返されるのが可笑しくてたまらず、また、「これはロードムービーなんだ」みたいな、妙な気持ちも湧き上がってきます。

そして行く先々には、映画かよ。名物「癖つよ助演陣」たちが待ち受ける!

亜美のぶっとび後輩、潤ちゃんが先ず現れ、

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

再演希望の最も多いキャラの一人、潤ちゃん。

潤ちゃんのストーカー、いやしの安岡がすごみ、

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

「仕方ないでしょう!」当然と言わんばかりの安岡(笑)

そして今回初登場、潤の高校時代の同級生、恵麻ちゃんは、本作中最も強い印象を残す登場人物の一人!

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

亜美もたじたじの癖つよキャラ、恵麻ちゃん!

あたまの回転が早く、観察眼が優れていて、自分の欲望を押し通すことに一切の躊躇がない彼女は、亜美をして「一緒に映画観に行くなんてムリだわ」とドン引きさせるほどのパワーにあふれていて、再登場&物語をひっかき回すトリックスターとしての活躍を、期待したくなります!

そして、第38話「ラスト・サマー」のラストで、鮮烈な印象を残したキーコさんとも再会できる!!<

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

みんな大好き、お酒の強い陽気なキーコさん!

キーコさん再登場は、わたくしとてもうれしかったー!
好きなんですよね、キーコさん。おそらく亜美ちゃんの周りで最も酒が強く、明るく律儀なキーコさん!
次はキーコさんメインのお話が見たいってほど大好きです。よろしくお願いします!(笑)

そして何と言っても、今回いちばんのみどころは、重要キャラのゼントロッパさんです。

映画かよ。Like in Movies 第46話「キングダム」

「ゼントロッパです」ニコッ!て、なんて名前なのぉ!(笑)

「ゼントロッパ」とは、彼女がメルカリで名乗っているハンドルネームであって、作中本名は明かされていません。

で、彼女との、初対面のシーンが本当に可笑しい(笑)(笑)(笑)

ミノル「(あなたが)ゼントロッパさん」
ゼントロッパ「ゼントロッパです」ニコッ

って、あんたwwwwwww なんちゅー名前なのよwwwwwww

実はわたくし、本作の撮影見学にお邪魔しまして、こちらのシーン、撮影中から見てたんですが、「ゼントロッパです」ニコッの瞬間、本当に面白くて、笑い声を漏らさぬようにするのが大変でした(笑)

このゼントロッパさんが、もう本当によき。
彼女は本名も、人物設定も、作中で明かされていませんが、見るから真面目そうな、ふつーのOLさんとして生きておられるんだろうなぁというムードの後ろに、隠しようもない映画への熱狂が透けて見える。
まちがいなく彼女は、亜美やミノル、そして清美ちゃんレベルの映画ヲタです。
でもたぶん、会社の人なんかは、彼女がそこまで熱狂的に、映画を愛していることを知らない。
おそらくゼントロッパさんは、自分と同じレベルで映画の話を出来る人が、周りに居ないんだと思います。だから、会社なんかでは、プライベートの話は一切せず、やわらかく微笑みながら、淡々と業務をこなしておられるのでありましょう。
しかも仕事はスゴく出来る。
しかし、実は燃え上がるような映画への情熱を秘めていて、どうしても観たい映画のためなら、DVDBOXにポンと20万円出すこともいとわない!

こういう人物像が、ほんの数分のシーンで、確実に伝わってくるのです。

映画ヲタで、彼女に好感を抱かない人、いる???? わたしはいないと思うなー
一見ふつーなのに、燃え上がるような情熱があり、情熱の対象に対して、ストレートによろこびを表現できる人って、本当に魅力的だなと思います。

このように魅力のある、「同類」ヲタに出会った亜美とミノルの決断は!?
そして、亜美ちゃんの宝物、『キングダム』DVDBOXの運命は!?

是非ご覧になって、ハラハラドキドキと「映画ヲタでよかった」という静かなよろこびに、浸ってみてください!!

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