Canary Chronicle~カナリアクロニクル~

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映画や本のレビューや雑感、創作活動や好きなもののことなど。トリッチのあたまの中のよしなしごとを綴ります。

【映画レビュー】『シド・アンド・ナンシー』1986年

シド・アンド・ナンシー』1986年

『シド・アンド・ナンシー』1986年

シド・アンド・ナンシー』1986年:あらすじ

「救急車は呼んだのかね?」
「……」
「救急車は?」
「……」
「私たちは女性の身元が知りたいんだ。名前は?」
「……ナンシー……リンダのところで出会った……」

放心状態で取り調べを受けている男は、シド・ヴィシャス
セックス・ピストルズのカリスマ的ベーシストでした。

シドの恋人、ナンシーが刺殺体で発見され、シドは容疑者として逮捕されていたのです。
彼の回想のかたちで物語が始まります――。

【レビュー※ネタバレあり】ダメな男とダメな女。愛しすぎるラブストーリー【シド・アンド・ナンシー

※※※本作の場合は、冒頭で二人がどうなったか明かされている訳ですが、
この後の文章で、ラストシーンについての言及しますので、未鑑賞で知りたくないかたは読まずにスルーなさってください!

映画サイトなどでは評価が低く、個人的にピストルズも好きじゃないし、ということでスルーしてきた本作ですが、妹に無理矢理押し付けられたので鑑賞。

そしたらまぁアナタ、めっちゃいいじゃありませんか!!

シド・ヴィシャス役、ゲイリー・オールドマンやんけ!
劇中シドそっくりだったんで、役者さん誰かは全く意識せずに観てて、鑑賞後にビックリ。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

いやーーーーゲイリーのシド、いいですね。
じぶんのことカミソリで切ったぎったり、鼻血まみれでプレイしたり、ピストルズを常にディスってる記者をライブ中に見つけてステージ飛び降りてベースでタコ殴りにしたり、ぶっ飛んだ演技、最高!!

それでいて、ニコニコうれしそうにしてるときは子犬のような笑顔。素晴らしい。

対するナンシー役はクロエ・ウェップ。
鑑賞後うぃきを見に行ったら、普通にしてるときは穏やかで愛くるしい女性だったのでビックリ仰天!

女って化けるわー。ナンシー役のときは、はっきり言ってブスもいいとこ。
わたくし女優さんのルックスをガタガタディスるの、下品だから大嫌いですが、本作においてはナンシーをめちゃくちゃブスに撮ることで、映画としては大成功してるっていうか、めっちゃ魅力的に見えました。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

『シド・アンド・ナンシー』1986年

何処にも馴染めない、生家ですら疎まれている女。
バカでヒステリーで淫乱で、でもめちゃくちゃさみしがり屋で、常に混乱している女。

そんなダメなナンシーとダメなシドが出会って、離れ難く結ばれてしまって、坂道を転がり落ちるようにますますダメになっていくんだけど、何かもう、愛しい。何だこれ。めっちゃ愛しい。目が離せない。

「あんたは大スターだったじゃない。でもあたしは、何でもない。ただの女なのよぉ!」
ってナンシーが泣き狂うシーンがあるんだけど、シドはカリスマだったかもしれないけども、やっぱりベースは大してうまくないし、音楽的才能に恵まれた訳じゃないと思うのね

で、シド自身もそのことはよく分かってるので、ソロになってからも「みんなはジョン(ロットン)が見たいんだ」ってクヨクヨしたりする。

何かね、もうね、「何者かになりたい。で、方向が見えるような気がして、そっちに道が開かれてると思ったけど、ほんとは自分はそれにふさわしいものなんて持っていなかった」って思うこと。怖いですよね。痛いですよね。もううわああああってなりました。

でももう、二人とも、生き直すエネルギーは残っていない。
さみしいよなあああああ史実ではナンシー20歳、シド21歳で亡くなった訳ですが、ぶっちゃけ20、21なんて子どもじゃないですか。27clubどころじゃない幼さです。

子どもの、狭い視野のまま死んでしまった。
このことを思うと、とてもさみしくなります。

それでも、本作は救いのある物語と思いました。

ラストは不覚にも泣いてしまいました。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

『シド・アンド・ナンシー』1986年

釈放されたシドが、夜明けのゴミだらけの川沿いをトボトボと歩いていく。 と、寂れたピザ店が。 はらが減っていたシドは、入っていってもぐもぐピザを食べる。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

店を出るとワルガキどもが、ラジカセで音楽を流しながらあそんでいる。 音楽は、後に世界的に流行するラップで、もうこんなところにも、「シドの時代は終わった」ということが感じられて、とてもとてもさみしくなります。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

一緒にちょっと踊ってあそんだあと、ワルガキどもと別れて、再びトボトボと、行く当てもないまま歩き出すシド。

そこへ、キッとタクシーが横付けされる。

シドがのぞき込むと、バックシートには、花嫁を連想させるようなパンクな白ドレスを来たナンシーが!

『シド・アンド・ナンシー』1986年

ナンシーが、いつものブスな笑顔でニコッとシドに笑いかけます。 シドは、子犬のようないつもの笑顔でナンシーに微笑み返して、バックシートに乗り込みます。 二人はキスをし、抱き合い、タクシーが出発する。

よかったなぁ。シド、もう一度ナンシーに会えた。 そう思ったら、なんか涙が。静かで地味で、ブスなラストだけど、泣いて泣いて止まりませんでした。

子どもに等しい年齢で亡くなった二人は、何も成し遂げられなかったかもしれないけれど、二人っきりの愛の世界があった。

閉鎖的で破滅的なそれは、愛なんかじゃない、共依存だという人もいるかもしれない。そして現実には、余りにもべったりな関係って息詰まるものだけれど、わたしたちはそれがめちゃくちゃ甘美な、めくるめく快楽であることを知っている。

だからわたしたちは、シドとナンシーのような一心同体的べったり愛には、永遠の憧れを抱くのでしょう。

ゴミがめちゃくちゃ降って来る夜明けの街でキスする二人の何と美しいこと。

『シド・アンド・ナンシー』1986年

本作未鑑賞の皆さん! 是非一度ご覧になって下さい。
トリッチジャッジでは、本作、極上のラブストーリーです!!(^皿^)

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