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【映画レビュー】『ザ・セル』2000年

ザ・セル』2000年

『ザ・セル』2000年

ザ・セル』2000年:あらすじ

キャサリン(ジェニファー・ロペス)は優秀な小児科医。先進医療を執り行うキャンベル・センターに勤務しています。現在は特殊な装置を使って、昏睡状態のエドワード少年の内面世界にアクセスし、意識の回復を目指す治療に取り組んでいます。

ある日キャンベル・センターに、連続殺人犯、カール・スターガー(ヴィンセント・ドノフリオ)がFBIによって運び込まれてきました。

彼は分裂症(※注 映画の中で使われていた表現)を患っていて、時間が来ると作動する特殊な装置で、女性を溺死させてきた経緯があります。

今回も一人行方不明のままカールが昏睡状態に陥ってしまい、早く見つけないと監禁中の被害者の命があぶない! それでキャサリンに、カールの内面にアクセスし、被害者の居場所を聞き出してほしいというのです。

キャサリンは承諾し、狂気に満ちたカールの心に潜っていきます――。

【レビュー※ネタバレなし】眼を見張る幻想表現、だからこそ惜しい、惜しすぎる!【ザ・セル

相手の精神世界にダイブするという世界観は、夢枕獏先生の『サイコダイバー』シリーズを彷彿とさせます。

内面世界の幻想の映像化というと、非常にグロいか意味不明かになりがちですが、『ザ・セル』はスゴすぎる。

冒頭、エドワード少年と交流しているキャサリン
白いドレスに身を包み、砂漠で馬を駆っています。下りると馬は彫像になる。実に美しい描写です。

『ザ・セル』2000年

そして、殺人鬼カールの狂気の内面世界は更にスゴい。
殺された女性たちは、彼の残酷でフェティッシュな玩具にされている。漂白されて動物たちと一緒に飾られていたり、半分機械仕掛けにされていたり。 これらのビジュアルは「クーロンズ・ゲート」の半分伯爵とかが出て来るムービーを思い出しました。

『ザ・セル』2000年

そしてカール自身は、この世界の王として君臨している。
ノヴァクが腸巻取り拷問をされるときの、キンキラ絢爛な衣装もいいし、最初にキャサリンが邂逅した際の、東洋の王的な装いも素晴らしい!

『ザ・セル』2000年

お前は誰だ、何しにここへ来た、と言いながら、広間の左右いっぱいに広がっている紫色の巨大なマントを、ズアアアアアと引きずりながら、階段を下りてくるシーンにはシビれました。

『ザ・セル』2000年

と、この映画に対しては大絶賛を前提として、ひとつだけ疑問を呈しておきたい部分があります。これはどうしても言っておきたい。

作中でカールは「分裂症」と呼ばれています。
現在は統合失調症と言われているあの病気のことと思うのですが、ここがどうしても引っ掛かる。

以下は医療ド素人だけど興味を持って精神疾患について調べたことのあるオバハンの意見ですが、カールを分裂症とした設定はまずかったのではないか。

それは人権的なアレからではなく、「そういう病気ではないから」。

もし症例があったらごめんなさいですけど、分裂症=統合失調症て、カールのような秩序だった連続殺人は不可能じゃないですかね?? どちらかというと、急に安定を欠いて、物事に集中しづらくなる病気と認識しています。

カールのような、儀式的な、めちゃくちゃ込み入った殺人を繰り返し行うという設定には、無理があるように思えました。

しかもものすごく凝っている上に、費用も莫大に掛かりそうな殺し方です。

『ザ・セル』2000年

『ザ・セル』2000年

先ず「自動で被害者を溺死させる装置」。あれもんのすごく高額そうです。精神疾患ろくな仕事にも就いていなそうなカールには、準備そのものがどう考えても無理だと思いました。実際作中に登場するカールの住居は、貧しい下層白人の典型的なおうちでしたしね。

統合失調症を「何考えてるか分からん狂人で、連続殺人犯に成り得る」と言っているかのようなメッセージ性を持っちゃったのは、正しくないだろうし不快だなと思ってしまった。

連続殺人がカールのトラウマに起因するのだとしたら、統合失調症じゃなくてバンディみたいな性格異常だったらもう少し感情移入出来たかな。性格がねじ曲がっている人間の狂った内面で、息詰まるような応酬が繰り広げられる、とした方が、スリリングだし納得も出来たかなと。

非常に素晴らしい作品だけに、そこだけが気になりました。

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