『ザ・フォッグ』1980年
『ザ・フォッグ』1980年:あらすじ
カリフォルニア州の海辺の小さな町、アントニオ・ベイは、町の誕生100周年記念祭の準備に沸き立っていました。
素敵な灯台は、町の誕生に関わる功労者を曾祖父に持つ魅力的な女性、スティービー・ウェインのラジオ放送局にもなっています。
けだるい声の深夜放送にうっとりする街の人々。
しかしある夜、町中で怪奇現象が起こります。
コンビニの棚が地震のように揺れ、無人の駐車場の車のライトが一斉に灯り、クラクションが響き渡る。
そして海上では、漁船が不思議な光る霧に覆われたあと、霧の中から現れた謎の影たちに襲われ、漁師たちは全員惨殺されてしまいました。
一方、町はずれの古びた教会では、マローン神父が苦悩していました。
町に怪奇現象が起こった夜、いきなり崩れた教会の壁から発見された日記帳。そこには、町の建立者にして功労者として、今なお称えられている6人の、おぞましい罪が記されていたのです……。
【レビュー※ネタバレなし】小さな港町のクラシックな幽霊譚にうっとり❣【ザ・フォッグ】
これを観た夜は、あまりにも好みの映画に出会った興奮で、眠れなくなってしまって大変でした。
わたしにとっては、控え目に言って、最高オブ最高でしたね!!
カーペンター最高すぎる。
先ずストーリーが、クラシックな幽霊譚であったのがよかった。
メイキングでカーペンター自身が語っていたように、「バイオや原子力が生み出した化物ではなく、古典的な幽霊」の話なのです。
まさに、この恨み、晴らさでおくべきか、ですね。
100年前に、欲に目がくらんだ祖先のせいで、現代を生きる、何も知らない子孫たちが酷い目に遭ってしまう不条理ホラー。
そう、悪霊は、不条理だから良いのです!!
古い亡霊であることも相まって、ポーみたいなゴシックホラーのムードがぷんぷん。素晴らしかったです。
カーペンターの、例の音楽も素晴らしい。
そして絵面も素晴らしい。
霧の中でシルエットだけが見える亡霊たち。クライマックスで、教会のステンドグラスの窓をバリーン!と破って、次々と腕を突き出したり、教会のお説教とかするホールに、霧と共にズーンと現れるシーンには心底しびれました。
夜の浜辺に海から押し寄せる光る霧、日中の、海辺の光景も、灯台目指して下りていく崖づたいの橋も素晴らしい。
光景の美しさのせいで、ホラーなのに全編を通して不思議な格調高さが漂っています
そしてこれを強調しておきたいのですが、カーペンター映画の登場人物は、「事件でどのように振る舞うか」だけじゃないのがめっちゃいい。
つまり、平凡な眠たい田舎町での、彼ら彼女らの普段の生活も垣間見える。
『ハロウィン』もそうでしたがここにしびれてしまいました。
そして深夜ラジオが狂言回しになっているのもうまい。
深夜に、色っぽいDJの声とムーディな音楽を聴きながら、いろんなことを考えますよね。そういうムードと、退屈かもしれないけれど平穏な町で、それなりにしあわせに暮らしていた登場人物たちに、突然異物としてのモンスターが、静かに忍び寄り、襲い掛かる。
とっても怖いですが、同時にうっとりするような、遠い夢の世界の話のようでもあり。めちゃくちゃ最高でした。
いいな~「聖地巡礼」めっちゃしたい!!
あの灯台はほんとにあるものらしいので、まだ残ってるなら是非近くまで行って見てみたいです。
そして哀れな亡霊たちに思いを馳せてみたい。
そんな気持ちになれる素敵すぎる古典ホラーでした。